建設業界のDX推進を支援する「BUILD BOARD」

少子高齢化などを背景にして、近年の建設業ではより高い生産性と効率的な働き方への取り組みが求められています。こうした建設業における課題に対応するサービスとして、CACは「BUILD BOARD(ビルドボード)」の提供を開始しました。
こちらでは、CACの「BUILD BOARD」についてレポートします。

建設業における課題とDX推進

近年、建設業界の課題として労働人口の高齢化と人手不足が指摘されています。
また、従来、建設業の現場における工期不足への対応は「工程の合理化」や「工法変更」よりも「時間外労働での対応」が多い状況(図1)でしたが、2024年4月施行の「働き方改革関連法」によって時間外労働の上限規制が適用されることとなり、建設業界では、長時間労働の是正に向けた取り組みと効率的な働き方が求められています。

図1 工期不足に対応する取組(出典:国土交通省中央建設審議会(令和5年10月3日開催)配付資料「最近の建設業を巡る状況について」)
図1 工期不足に対応する取組
(出典:国土交通省中央建設審議会(令和5年10月3日開催)配付資料「最近の建設業を巡る状況について」)

効率的な働き方等の推進にはDXが有効であり、建設業界でもそうした取り組みを進めようとしています。(一社)日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発行した「企業IT動向調査報告書2024」によれば、業種グループ別のIT 投資で解決したい短期的な経営課題では、建設業(建築・土木)は「業務プロセスの効率化(省力化、業務コスト削減)」が最も高く(36.2%)、次いで「セキュリティ強化」(17.2%)、そして「働き方改革(テレワーク、ペーパーレス化等)」(13.8%)となっています(図2)。特に「働き方改革(テレワーク、ペーパーレス化等)」については、他の業種グループと比べて高い水準となっており、この課題の改善に対してITを活用して取り組もうとする強い意識が見受けられます。

図2 業種グループ別 IT 投資で解決したい短期的な経営課題(出典:企業IT動向調査報告書2024)
図2 業種グループ別 IT 投資で解決したい短期的な経営課題(出典:企業IT動向調査報告書2024)

一方で、建設業では、工事に多数の関連業者が参加することや、現場で様々な変更が発生するなどの業務特有の理由によりDX推進が思うように進められないといった事情もあります。

建設業界に特有の課題 ― 搬入日程の調整

建設業界に特有の課題の1つが、工事現場における資材の搬入日程の調整です。

建設工事は、元請けであるゼネコンをはじめとして、電気・空調などの設備工事を行うサブコン、資材の調達や製造に関わる商社やメーカー、そして実際の各種作業を担当する協力会社などがそれぞれ役割を担う多重構造で構成されます。
サブコンから先には多数の参画者がいることや、情報の伝達手段等に起因して、そのコミュニケーションには難しさが伴います。

多くの場合、資材の搬入日程の調整は、担当者間での電話やメール、FAXで行われ、現場での共有や管理はホワイトボード等で行われています。情報の伝達や管理に使われるツールが様々あることは、情報が集約されず、情報が共有されないことによる「言った」「言わない」といったコミュニケーションミスが多発する原因となります。
他にも、天候や道路状況による急な時間変更の連絡が間に合わず、作業員が手を止めて資材の荷受けに行き、待ち時間が発生してしまったり、資材を発送した商社側は予定の確認ができなかったり等、コミュニケーション上のトラブルや余計な工数が発生する原因ともなっています。
また、資材等の配送の証跡としてのFAXや受領票等は、紙の管理を必要とします。

建設工事における、こうした資材搬入日程の調整にかかわる課題は、従来の一般的な情報共有ツールでは解決しづらい、工事現場特有のものと言えます。

搬入日程調整ツール「BUILD BOARD」

こうした実情を踏まえ、一般的な情報共有ツールを使いづらい工事現場での課題を解決するツールとして開発したのがBUILD BOARDです。開発にあたって重視したのは、「現場で働く人たちの負担を軽くする」ことです。その背景には、「建設業界のDXが工事の管理者側にとどまっているのではないか」という問題意識がありました。シンプルな機能で、導入も活用も容易で、多くの工事関係者にメリットを感じてもらえる、そういうツールを目指しました。

BUILD BOARDは、工事現場における搬入日程の調整に特化したシンプルなWebカレンダーとなっています。

図3 BUILD BOARDの画面イメージ
図3 BUILD BOARDの画面イメージ

BUILD BOARDでは、プロジェクト(工事現場)ごとにWebカレンダーを作成します。その工事にかかわるゼネコン、サブコン、商社、協力会社等すべての関連業者を招待して、予定の共有が行えます。これにより、例えば、資材を送る商社は空き日程の把握が容易になり、荷受けに関わる担当者は先の予定をいち早く知って管理がしやすくなります。

PCやスマホのブラウザから予定の作成・編集・確認が行え、他にも、更新時のメール通知、更新履歴の確認、閲覧権限の設定といった機能も備えています。

Webカレンダーのユーザーは自分が招待されている現場のカレンダーしか参照ができないため、セキュリティ面でも安心で、現場の度に都度アカウントを削除しなければならない等の手間もかかりません。

BUILD BOARDの導入により、時間や場所を問わずに工事現場の関係者全員がWeb上で予定の確認を行えます。予定の変更もリアルタイムに反映されるため、コミュニケーションミスによるトラブルもなくなります。また、証跡として送っていたFAXも必要がなくなり、ペーパーレス化の推進にも効果を発揮します。

BUILD BOARDの開発では建設業界の方々に検証にご協力をいただいており、そうしたお客様からは「コミュニケーショントラブルは一切聞かなくなった」「残業する必要がなくなった」「ペーパーレス化が進んだ」といった評価をいただいています。

また、開発時に想定していたメインターゲットは「大都市圏の建物密集地の建設現場」でしたが、提供開始を発表すると、地方展開するハウスメーカー、プラントエンジニアリング会社などからも好意的な反響がありました。

今後、BUILD BOARDでは、建設業界のユーザーの皆様の声を反映して、より良いプロダクトとなるよう改善を継続していく予定です。
CACはBUILD BOARD の提供開始をはじめとして、今後も建設業界における課題解決を、先端ITを活用したプロダクト&サービスで支えてまいります。

「BUILD BOARD」の詳細情報は公式Webサイトをご覧ください。

「BUILD BOARD」公式サイト

[参考資料]

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