協和キリン株式会社様
(グローバルアウトソーシング)
グローバルでサービスデスクを集約
エンドユーザーの満足度向上とICT部門の企画業務へのシフトを目指す
日本を代表するライフサイエンス企業であり、バイオテクノロジーと抗体医薬を強みとする協和キリン株式会社(以下、協和キリン)。日本発の「グローバル・スペシャリティファーマ」として世界市場でのビジネスを拡大させている同社では、全世界の従業員の利便性向上と、IT部門コア業務を運用主体から企画主体へシフトすることを目指し、株式会社シーエーシー(以下、CAC)による支援のもと、グローバルサービスデスクの統合を実現した。
お客様の課題
- グローバルで統合されたサービスデスクを構築したい
- ITサポートに関する運用管理負荷を抑制したい
- グローバルでのサポート状況の可視化とガバナンスの適用を実現したい
ソリューションによる解決
- CACの支援により、国内外のサービスデスクを集約
- アウトソーシング業務の高度化でIT部門がコア業務に専念
- ITILベースのITSMツールを導入、可視化とガバナンス適用を実現
「グローバル・スペシャリティファーマ」として
世界市場に飛躍する
協和キリンは、医療用医薬品事業等を行う製薬企業である。「協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します」を企業理念に掲げ、創薬から開発、製造、販売までを自社で担う「グローバル・スペシャリティファーマ」となるべく経営改革を進めてきた。2019 年 4 月から組織もグローバル体制に移行し、日本、EMEA、北米、アジア・オセアニアの世界4リージョンでグローバル競争力の向上を目指している。
また、自社創製品の開発と、そのグローバル販売にも注力。ICTソリューション部長の廣瀬拓生氏は、「近年では、自社で創製した製品を北米、EMEA、アジア、その他の地域などグローバルで発売することに成功。その売上も順調に伸張しており、当社の業績を牽引するまでに至っています」と説明する。
こうした世界市場を視野に入れたビジネス戦略の推進と歩調を合わせ、同社はIT基盤の変革にも取り組んできた。「2021-2025中期経営計画」の策定に基づき、ICTソリューション部において新たに定められたミッションが、①グローバルICTオペレーションモデルの確立、②戦略的アウトソーシングの推進、③グローバルICT基盤の整備、④デジタル、データへの注力、⑤業務部門とのビジネスパート ナーシップ強化、の5つである。
中でも2021年度からの主な活動として取り組んできたのが、②の戦略的アウトソーシングの推進だ。廣瀬氏は、「現行の運用管理業務におけるアウトソーシング体制を見直すことで、ICTソリューション部のスタッフがサポート業務に忙殺される状態から脱却し、ビジネスに寄与するIT基盤の企画・構築に専念できるようにすることが最大の目的です」と語る。
「また、アウトソーシング先との関係性も、見直しが必要と考えていました。世の中のトレンドを見据えつつ、協和キリンのICT環境が抱える課題に対して改善提案を行ってくれるなど、当社ととも に業務をブラッシュアップさせていけるような協働型のパートナーシップを構築したかったからです」(廣瀬氏)
サービスデスクをグローバルで統一、
戦略的アウトソーシングを推進
具体的な取り組みとして行われたのが、サービスデスク業務の改革である。ICTソリューション部 クラウド&グローバルインフラストラクチャーグループ長の渋谷正吉氏は、「現在、協和キリンではグローバル全体で約13,000アカウントが存在し、約1,000のインフラ運用アイテムに対して、国内で月間2,000件、海外でも月1,000件以上の問い合わせやトラブル対応依頼がサービスデスクに寄せられています。そうした中で、様々な課題が浮上していました」と話す。
1つは、サポートベンダーがアイテムごとに存在していたこと。PCやスマートデバイス、Microsoft 365をはじめとする各種クラウドサービスなど、エンドユーザーの問い合わせ窓口が異なっており、問い合わせや問題が発生した時にも、どこにコンタクトすればよいのか、分かりにくい状態にあったという。「また、エンドユーザー自身で問題の切り分けができないこともあり、異なる窓口に問い合わせが寄せられることもよくありました」と渋谷氏は話す。
膨大なアカウントとインフラ運用アイテムが存在し、
そのサポート対応が課題だった
ICTソリューション部のスタッフがサポートに関する運用管理に忙殺されていたことも早急に解決すべき課題の1つだった。「サポートベンダーが対応できない場合には、ICTソリューション部のスタッフが問題解決にあたらなければなりません。そうしたサポート業務に忙殺され、企画業務や高度なIT支援などコア業務に専念できていなかったのです」と、渋谷氏は振り返る。
このほか、海外のサービスデスクは各拠点で独自に管理を行っていたことに加え、個人の担当者に依存するケースも多かったという。そのため状況を可視化できず、サポートサービスの品質管理やガバナンスが統合されていなかったことも問題視されていた。
これらの課題解決に向けて、協和キリンは全世界でサービスデスクの統一を決断。サポートベンダーを集約し、メールアドレスやWebポータル、国ごとに電話番号も統一することを決定した。併せて、ICTソリューション部のサポート業務負荷の解消、およびIT業務の高度化を目指し、アウトソース先となるベンダーの再選定に着手する。加えて、海外も含めた統一的なサポート業務の品質管理を行うために共通目標(SLA)を制定するとともに、グローバルで統一されたITサービスマネジメント(ITSM)を実現するべく、クラウド型のITSMツール「ServiceNow」の導入も決定。海外も含めたサポート状況の可視化とナレッジの共有、自動化による運用効率化に踏み出した。
国内外での多数のサポート実績を評価し、
CACとCognizantのパートナーシップを選択
2020年後半より協和キリンは、統合サービスデスクのアウトソース先となるベンダーの選定に着手、国内と海外で運用実績のある8社を選定した上で、各社の提案内容を精査する。そして2021年4月、最終的に協和キリンによって選ばれたのがCACと外資ITベンダーCognizantによるパートナーシップだった。
両社を選定した理由について渋谷氏は、「国内外におけるサービスデスクの経験と対応力の有無、製薬企業に関する豊富な知見をはじめ、ITILベースのメソドロジーが確立されているか、インフラだけでなくアプリケーション連携にまでも拡張できるか、そしてコスト面などを総合的に評価しました」と説明する。また、廣瀬氏も、「国内/海外の両方で多くのサポートデスクの構築/運用 の実績を有していたことに加え、提案内容も将来を見据えたコスト最適化の仕組みまで含まれていたことを評価し、CACとCognizantのパートナーシップを選択しました」と語る。
CACの多方面にわたる支援により、
統合サービスデスクは安定運用フェーズへ
CACとCognizantの協力のもと、2021年4月からのアセスメントフェーズを経た後、既存ベンダーからのアウトソーシングの移管が進められ、2021年11月から日本、EMEA、北米、アジア・オセアニアの4リージョンにまたがる統合サービスデスクの本番運用が開始された。現在、CACの主導により、協和キリンのグローバルで統合されたサービスデスクは安定運用へと踏み出しているという。
渋谷氏は、「アウトソーシング先の移行に際してCACを評価した点は、シャドーイングやリバースシャドーイングといった引継ぎのフレームがしっかりと確立されていたことです。また、移管元 のベンダーに対しても協力を要請、事前に変更計画を提示して移行作業を円滑に行えるよう、多方面で尽力してくれたことも評価ポイントです」と語る。【※下図の「■現状のグローバル アウトソーシング実行体制」参照】
ファーストコールでの問題解決が80%にまで上昇、
グローバルでのサポート状況も可視化
国内外のすべての従業員を対象とした新しい協和キリンのサービスデスクは「GUIDe(Global User-support ICT Desk)=ガイド」と名付けられている。どのリージョンの従業員であっても「GUIDeに問い合わせすれば、すべて問題が解決できる」と分かるよう、ブランディング化するためだ。
CACの支援のもと立ち上げられたGUIDeは、先に述べたサービスデスクに関する課題を解決し、従業員とICTソリューション部のスタッフに数々のメリットをもたらしている。1つが、サポートレ ベルの向上だ。渋谷氏は、「サポートレベルに対して各種SLAを制定し、目標数値を定めたのですが、すでにその目標値をクリアするようになっています」と話す。
「例えば、最も重要視している指標の1つとして『FCR(First Call Resolution)』、つまり、最初のサービスデスクへの相談でどれだけ問題が解決できたのかを定めたのですが、当初の70%から目標値を80%に上げました。日本/海外とも既にこの数値目標を達成しました。」(渋谷氏)
また、サービスデスクの運用状況に関して、国内外を問わない統一的なレポートの提供により可視化されるようになったほか、問い合わせチケットがクローズした際に行われるユーザーサーベイの回答に基づき、さらなるサービスデスクの改善を図る、というサイクルも回せるようになっているという。
「エンドユーザーからも『問い合わせ窓口が一本化されて分かりやすくなった』『Webポータル等を通じて、サポート依頼の進行状況が把握できるようになった』などの声も寄せられるように なっています」(渋谷氏)
なお、当初の課題として掲げられたICTソリューション部の運用負荷軽減だが、GUIDeの運用が軌道に乗った現在、今後の効果として大きな期待が寄せられているという。
CACの支援により、サービスデスクのグローバルアウトソーシングを実現した協和キリン。渋谷氏は今回のプロジェクトを振り返り、次のようにCACを評価した。
「移管に際しては交渉面を含め苦労したこともありましたが、CACには経営層の方々を含め一貫して私達に寄り添い、迅速かつ手厚い対応をしてもらえたことに感謝しています。また、実運用にあたって不明瞭な部分が生じた際にも、関係者とコミュニケーションをとり、内容を深堀りするとともに、さらなるノウハウを付加して明確化していただいた点も高く評価しています」(渋谷氏)
また、廣瀬氏も次のように今後の展望と、CACに対する期待を語った。
「現状ではインフラのアウトソーシングを主軸に変革を進めてきましたが、今後は業務アプリケーションの領域にも踏み込み、さらなるサポート業務の効率化を図っていきたいと考えています。 そうした中で、今後CACとは、単なるアウトソーシング先、アウトソーシング元という関係ではなく、協和キリンが戦略的に物事を変革していくためのパートナーになってくれることを期待してい ます」(廣瀬氏)
お客様プロフィール
会社名 設立 所在地 |
従業員数 ホームページ |
日本発のグローバル・スペシャリティファーマ
キリンホールディングスの子会社で、キリングループに属する協和キリンは、バイオテクノロジー、抗体医薬を強みとする製薬企業。高度な技術とユニークな視点で独自の研究を進め、高品質の製品を開発・提供。日本を代表するライフサイエンス企業として、常に新しい可能性へ挑戦し、世界の人々の健康と暮らしに貢献している。
- 記載の会社名及び製品名は、各社の商標または登録商標です。
- 本事例の内容は2022年時点のものです。
PDF版はこちら
本事例のPDFを以下からダウンロードいただけます。