CACが描くHCTechの未来
スーパーなどで新しいタイプのレジが増えてきました。
レジで計算してもらった後、支払いは精算機で行うもので、セミセルフレジと呼ばれます。
精算機が1つのレジに対して複数あるのでレジ待ちの列が短くなります。レジ担当者が現金に触れる必要もありません。
ただし、従来のPOSレジだと、来店した顧客は店員さんに現金かクレジットカードを渡すだけでよかったのですが、セミセルフレジの場合は、消費者自身が画面で選択ボタンを押すなどの操作が必要になります。
店によって利用している機種が異なるため、慣れるまでは操作に戸惑うことも少なくないでしょう。
これがたとえば、精算機の前にいる顧客が財布からクレジットカードを取り出したら、「この顧客はカード支払いなんだな」と精算機が察してくれたら、支払いはもっと楽になると思いませんか?
CACでは、テクノロジーが私たちの生活や行動を見守って、私たちの意図を察し、より良い結果のために設定やレコメンドを行えば、ときには必要なことを自動実行してくれれば、私たちの社会はテクノロジーからもっと大きな恩恵を享受することができる、という仮説を立てています。
こちらでは、そうした仮説に基づくCACのソリューション・コンセプト「HCTech」についてレポートします。
HCTechとは
「HCTech(エイチ・シー・テック)」はHuman Centered Technologyを略称で、CACが提唱する新しい時代のソリューション・コンセプトです。
これまで、人間はコンピュータやスマートフォンなどの端末を自ら操作することで様々なテクノロジーを活用し、情報を得たり、行動をとったりして、望む結果を得てきました。人間が「能動的」にテクノロジーを活用して価値を得てきたと言い換えてもよいでしょう。
例えば、スマートフォンで昼食をとるお店を検索して、検索エンジンがすすめるあなた好みのお店に行ってみる、といった身近な行動も能動的なテクノロジー活用の一例です。
これに対して、CACが描くHCTechの未来では、人間は端末などに自ら働きかけることなくテクノロジーの恩恵を受け、最大限の価値を享受することが可能になる、との仮説に基づきます。AIやセンサー、IoTといった最新のテクノロジーは、人間によるコンピュータ操作を待たず、人間の周囲のあらゆるモノを介して、人間の状況や要求を察知し、瞬時に適切な価値を提供してくれるのです。
AIやIoTで高度な生産性と品質管理が可能になるスマート工場の実現は、HCTechの1つの例と言えるでしょう。
ただし、HCTechは人間がテクノロジーに対して受け身だったり、消極的になることを意味するわけではありません。
HCTechの未来でも世の中の主役は人間です。
AIの発達にともない、「AIが人間の仕事を奪う」といった予測や議論を見かけることも増えてきました。しかし、CACはAIなどの技術の進展が原因で、人間の仕事自体が無くなるとは考えていません。
HCTechの未来でのAIは「人を察し、人を活かし、人を健やかにする」テクノロジーとして存在します。
そうしたAIなど最新のテクノロジーのサポートを受け、人間は、よりクリエイティブで、より付加価値の高い仕事に集中することが可能になります。これにより、現在の社会が抱える様々な課題を解決し、人間がより健康で、より幸せな社会を実現する、こうした未来をHCTechは目指しています。
HCTechを構成するテクノロジー
HCTechの中心になる技術はAIです。AIによる分析と推定を活用し、最新のテクノロジーも組み合わせて、HCTechは人とテクノロジーの新たな可能性を創造します。
以下に現在のHCTechを構成するAI技術の一部を紹介します。
感情認識
感情認識は人間の表情筋の動きから人間の感情を推定するAI技術です。
静止画だけでなく、動画やリアルタイム映像の分析も可能で、意識せず瞬間的に生じる表情から感情を高精度に推定できます。ディープラーニングの技術をベースとし、世界87ヵ国以上から収集された800万人以上の膨大な人間の顔画像データを解析することで、精度の高い感情認識を実現します。
非接触型バイタルセンシング
コア技術は映像脈波抽出技術で、血液中のヘモグロビンの「緑色光を吸収する性質」に着目し、血管の収縮・拡張に伴う皮膚領域の反射光を画像解析することで信号波を抽出します。
これにより、対象に接触することなく、健康状態をモニタリングすることが可能になります。
この技術により、心や体の状態を可視化することができ、様々なシーンでの活用が期待されています。
姿勢推定・動作推定
姿勢推定は、動画や静止画などで撮影した人間の姿勢を肩や肘、腰といった関節点から推定し、関節点を結んで姿勢を検出して人間の各種部位の位置情報を取得する技術です。また、動作推定とは、人間の体の各部位の動きや部位間の角度等、一連の画像から連続的に動作を推定する技術です。こうした技術は、製造現場の作業者やプロスポーツ選手の動作の分析などを始めとして活用が進んでいます。
上記のほかにも顔認識、物体検知、外観検査、時系列データ分析といったAI技術があるほか、AI以外では、ブロックチェーン技術や、一連の業務を自動化するハイパーオートメーションなどもHCTechを構成するテクノロジーです。
HCTechはどんな業界で活用できる?
HCTechはどんな業界で活用ができるのか、いくつか具体的な業界でのテクノロジー活用の可能性を紹介します。
製造業でのスマート工場化サポート
HCTechは、製造業において、その幅広い要素技術でスマート工場化の実現をサポートします。スマート工場とは、コンピュータネットワーク(インターネット)により各地の工場の製造ラインや工作機械などを接続し、効率的な生産と高い品質管理を実現する工場です。
HCTechには、スマート工場化を支援する多くのソリューションがあります。具体例として、以下の対応が可能です。
- 稼働状況や生産状況の進捗把握
- 遠隔監視を活用した効率的な保守作業
- 作業ミス・異常の検知
- 熟練者の動作順やタイミングのマニュアル化
- 不良品検出
- 規制エリア入退室
- 作業者の居場所特定
- 効率的な製造ライン設計
医療・介護のICT活用
高齢化の進展や人材の不足、高度化する医療など多くの課題を抱える医療・介護の業界では、ICTの活用が課題解決のカギとされています。HCTechでは、医療・介護の現場で以下のサポートが可能です。
- 再来受付の効率化
- 入居者の受付・無断外出防止
- 健康スクリーニング
- 日常での手軽な健康管理
- 入院者の転倒などの異常検知
- 感情認識による自閉症患者サポート
- 脈波モニタリングによる従業員の健康チェック
このほか、金融業や物流業でもAIを始めとしたHCTechのテクノロジーは活用の可能性を秘めています。後述するCACのHCTechコンセプトサイトでは、こうした業界での活用について詳しく紹介しています。
HCTechのこれから
CACがHCTechで目指す未来は、CAC単独で実現できるものではありません。HCTechの未来は、お客様やパートナーを始めとした多くのステークホルダーの皆様とともに創りあげていくものだと考えています。
CACのHCTechは、これからも「人を察し、人を活かし、人を健やかにするテクノロジー」のコンセプトのもとで、生産性向上や新たな価値創出等、新技術やソリューションの開発を進めていきます。
今回ご紹介したテクノロジーはHCTechを構成する要素技術の一部でしかありません。
以下のHCTechのコンセプトサイトでより詳しく、技術や事例、ソリューションなどを紹介しています。
ぜひご覧いただき、サービスやテクノロジーの開発や活用について、お気軽にご相談ください。