地域活性化起業人として雲仙市のデジタル化を推進する
CACは、2019年7月に長崎市に事業拠点を設けたことをきっかけに、地域課題の解決と地方創生に役立つイノベーションの創出に取り組んでいます。その一環として2021年7月5日付で長崎県雲仙市との間で同市のデジタル化推進および観光振興に向けた協定を締結しました。
デジタル化推進の協定は、雲仙市の市民サービス向上を目的としており、地域活性化起業人制度を活用してCACからIT 人材を派遣するもの、観光振興の協定は、CAC社員のワーケーション推進も含めて、同市の観光振興を通した地域活性化を目的としています。
CACは協定に基づき、雲仙市のデジタル化推進を担う社員を2021年7月から派遣しています。
こちらでは、「地域活性化起業人」として雲仙市のデジタル化推進に取り組むCAC社員のインタビューをお届けします。
テーマは雲仙市のデジタル化推進
― 雲仙市に着任するまでの経緯を教えてください。
中村 星斗(以下、中村): 私はCACへの入社4年目で、これまで民間企業のお客様向けにリサーチとレポーティング、プロジェクトマネジメント支援、ポータルサイトのユーザーサポートといった業務を経験してきました。
CACが雲仙市と協定を締結するに際して、地域活性化起業人として着任して雲仙市のデジタル化推進を担う人材が社内で募集され、私が選ばれて派遣されることになりました。
現在は、雲仙市市役所政策企画課で業務を行っています。
― 地域活性化起業人制度とはどういう制度なのですか?
中村: 地域活性化起業人制度は、三大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の区域の全部)にある企業等の社員が、ノウハウや知見を活かし、一定期間、地方自治体で地域独自の魅力や価値の向上などにつながるような業務に従事する制度です。
― 「雲仙市のデジタル化推進」をテーマに、どのような業務をしているのですか?
中村: 雲仙市では、人口減少問題の克服や地域経済の活性化などの社会経済状況の変化に対応していくための市政運営の指針として「雲仙市総合計画」という10ヵ年計画を策定しています。
私は現在主にこの「雲仙市総合計画」の中における「デジタル化推進計画」の作成を担当しています。
ただし、計画を作成すればデジタル化が進むのかと言えば、そのようなことはありません。
「デジタルとは何か」「どんなことができるのか」「なぜ必要か」といったことから丁寧に説明して理解いただき、デジタルの重要性や活用の機運を醸成することから始めています。
― 具体的にはどのような活動を?
中村: 市の役職者の方々向けにデジタル技術やトレンドの勉強会を開催したり、若手職員の皆さん向けにはデジタルを絡めたアイデア創発のワークショップを実施したりもしています。
また、市役所にとっては市民の皆さんがお客様にあたるので、その方々への対応もあります。例えば、雲仙市では「ものづくり」「ことおこし」に取り組む人をつないで市内外へ発信する「雲仙人(くもせんにん)」というプロジェクトが行われていて(事務局:政策企画課)、その参加者のデジタルに関する困りごとの相談対応などを行ったりしています。
実際に市民の皆さんからデジタルに関する簡単な悩み相談を受けて、解決し、対話しながら、本当に必要とされている施策は何なのかについての知見を深めています。
市民の皆さんの悩み解決と同じように、市役所内部の業務でも何かしら改善できることがないかアンテナを張っています。Excelの活用方法など、気になった作業について声を掛けることで日々の業務が改善されたことも実際にありました。
― 難しさ、やりがいはどんなところに感じていますか?
中村: この仕事では、定形業務等は全くないので、自分でできることを自ら探しに行かなければならない点に難しさを感じます。
与えられたテーマは「雲仙市のデジタル化推進」という漠然としたものなので、何ができるのか手探りの日々です。行政や観光領域で何が起きているのか情報収集やキャッチアップも欠かせません。
また、行政という畑違いの環境や文化に慣れるのに時間がかかりました。
例えば、システム面で企業と行政では環境に違いがあります。企業では利用できる仕掛けや仕組みが行政では様々な理由で利用できないことに戸惑うこともあります。
ただし、行政は市民の皆さんの重要な情報をお預かりしているため、そうした制約が多くなるのは仕方のない面もあり、うまくバランスを取りつつ解決策を見つけていきたいと感じています。
そうした中で、自分が行ったことに対して、何かしらポジティブなフィードバックをもらえるのは大変嬉しいことです。気軽に相談してくれたり、「この間教えてもらった〇〇、すごく良かった!」と言ってもらえたりすると、とてもやりがいを感じています。
魅力にあふれる雲仙市
― 雲仙の魅力を教えてください。
中村: 雲仙市と聞くと、雲仙普賢岳をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、雲仙には「温泉」と書いて「うんぜん」と呼ばれるほど歴史がある温泉や、日本初の国立公園があったり、食材の宝庫だったりと隠れた魅力がたくさんあります。雲仙一帯は標高差が大きく、海水浴場もあれば、「雲の上の秘境」のような趣の場所もあります。
また、触れ合う「人」が本当にあたたかく、外から来た人たちでも暖かく迎え入れてくれるため、全ての人にとっての「第2のふるさと」となり得る場所だと思います。
― 雲仙に来て新たに始めたことはありますか?
中村: 雲仙に来て始めたことは料理です。
初めての1人暮らしなので「OK, Google. キャベツ 千切り 方法」と調べながら自炊をしています。雲仙市は「一億人のいぶくろ」と呼ばれるほど食材が豊富な地域です。特に野菜が本当に美味しいので、最寄りの直売所でいろいろな野菜を買って自炊に挑戦しています。
― CACは雲仙市でワーケーション・トライアルを行いました。雲仙市でのワーケーションをどう考えますか?
中村: 私自身は雲仙市に住んでしまっているので、ワーケーションとは言えないかもしれません。
とはいえ、雲仙市は豊かな自然に溢れているところなので、いつでもバケーション気分を味わえるのはとてもいいですね。車で5分走れば海が見えますし、1時間程度の登山で絶景が堪能できる山やキャンプ場も点在しているので仕事のリフレッシュにはとてもいい環境だと思います。
先日は空が澄んで星がとても綺麗だったので池の畔でキャンプをして、翌朝近くのコワーキング施設で業務をしました。船を持っている人も少なくないので、すぐに海釣りに繰り出すこともできます。
コロナで仕事や生き方の再定義が急速に進む中、このように恵まれた環境にいるので、是非様々な働き方を試せればと思っています。
― CACは、社員が現地を訪れた時に利用できるコワーキングスペース等の整備も進めていますね。
中村: 既存の店舗を利用させてもらったり、今年オープンしたコワーキング用の施設と連携したりしています。旅行やワーケーションを通じて地方のリアルに触れると見える世界や価値観も大きく変わるはずです。数ある旅行地、ワーケーションの候補地として「あえて」雲仙市を訪れてみるのは良いと思います。
「絵に描いた餅」で終わらせない
― 地域活性化起業人制度に基づく契約期間は来年3月末までですが、どんなことに取り組みますか?
中村: 目に見える成果を作るために、すぐにできそうな何かを開発するというのも一つのやり方だと思いますが、できれば長期にわたって意味があるものを手掛けていきたいと考えています。
来年から市の5ヵ年重点プロジェクトとして「デジタルを活用した市民サービスの向上」プロジェクトを立ち上げることになっています。
このプロジェクトは従来の縦割り組織ではなく、組織横断のプロジェクトとして発足する新たな取り組みです。
そのため、参加いただく職員の皆さんと一緒に「絵に描いた餅」では終わらないように、ニーズに基づいた実行可能なプロジェクトを立ち上げていきます。
デジタルというテクノロジー面だけではなく、文化や意識も変わっていく必要があると思うので、より多くの関係者の皆さんと丁寧に対話しながら進めていきたいと思います。