DX認定制度とCACの取り組み
2022年7月にCACは経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」に認定されました。その際の経験も踏まえて、DX認定制度の概要と認定取得のメリットなどについてレポートします。
DX認定制度とは?
DX認定制度は、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する事業者を国が認定する制度です。認定の対象は公益法人等も含む法人と個人のすべての事業者です。
本制度では、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が「DX認定制度事務局」として各種相談や問合せ対応、認定審査事務を行っています。申請受付は2020年11月から開始されました。
認定の基準になるデジタルガバナンス・コードとは、企業のDX (デジタルトランスフォーメーション)に関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応を経済産業省が取りまとめたもので、2022年9月に改訂版の「デジタルガバナンス・コード2.0」が公表されています。
デジタルガバナンス・コードは以下の各項目で構成されており、各項目それぞれに(1)基本的事項(①柱となる考え方、②認定基準)、(2)望ましい方向性、(3)取組例の3つが示されています。
- 経営ビジョン・ビジネスモデル
- 戦略
2-1.組織づくり・人材・企業文化に関する方策
2-2.IT システム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策
- 成果と重要な成果指標
- ガバナンスシステム
また、デジタルガバナンス・コードにはDXの定義が次のように記載されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
出典:デジタルガバナンス・コード(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html)
この定義には、企業の競争力にはデジタルの最大限の活用が不可欠であること、そしてそれは一部業務や機能のデジタル化といった従来のIT化に留まらず、企業文化や風土までも含む経営や製品・サービス等すべてについてデジタルを前提に抜本的に見直すことである、という経済産業省の強い課題意識が見て取れます。
こうした課題意識は、2018年に経済産業省が初版を発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(以下DXレポート)にもよく表れています。DXレポートは複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムが新技術の導入やDXを阻害する「2025年の崖」に警鐘を鳴らすものでした。その後のコロナ禍の下で社会の DXは加速したものの、更なる DX 推進のため、DXレポートで指摘された阻害要因(古い企業文化=固定観念)を克服して日本企業のDXを強く推し進めていきたい、というのがDX認定制度創設における狙いと考えられます。
DX認定を受けるメリット
事業者がDX認定を受けるメリットには、以下の5つが挙げられます。
- DX認定を受ける過程でDXを推進する際の自社の課題が整理される
- 国が認定企業を公表するため、DXに積極的な企業としてブランドの向上につながる
- DX投資促進税制による税額控除を受けられる
- 中小企業は融資などの支援が受けられる
- 東証上場企業の場合、「DX銘柄」への応募資格が得られる
DX認定制度の開始当初は、上記5の「DX銘柄」への応募を視野に入れた申請が多く、公表された認定事業者の大半が上場企業でした。その後、本制度の認知度が高まるにつれて非上場企業の認定も増えています。
経済産業省が2022年4月~5月に実施したDX認定事業者へのアンケート結果では、DX認定取得のメリットとして「DX戦略の推進」が最も多く挙げられています。その大きな理由として考えられるのは自社の課題の整理です。
DX認定の申請には、経済産業省が用意した「DX認定制度 申請チェックシート」を記入して提出する必要があります。その設問に回答していく過程で、DXを推進していくのに不十分な点を認識したり、すでに推進中の取り組みがDXに役立つことに気付いたりすることができます。それがDX戦略の推進に役立っていると考えられ、これは経済産業省の狙いにも一致すると言えます。
アンケート結果では、「顧客に対する企業イメージ向上」「人材確保に向けた企業イメージ向上」の回答も多く、次いで「DX認定制度ロゴマークの使用」となっています。DX認定を受けた事業者は、 IPA のホームページで認定事業者一覧として公表され、さらに「自社がDXに積極的に取り組んでいる企業」であることを示すDX認定のロゴマークを利用することが可能になるため、企業のブランド価値や信用力の向上につなげるためにDX認定取得を試みる企業が増加していると考えられます。
DX認定の申請方法
事業者によるDX認定の申請方法はおおよそ以下のとおりです。
- IPA提供のDX認定制度のサイトにある「DX認定制度 申請要項(申請のガイダンス)」を読み、申請要件などを確認する
- 同じくDX認定制度のサイトから「認定申請書」と「申請チェックシート」をダウンロードして記入、必要に応じて補足資料を準備する
- DX 推進ポータルへログインする(DX 推進ポータル利用には「gBizID」が必要。未取得の場合は新規ID発行手続きを行う)
- DX 推進ポータル上で申請を実施する(申請するファイルのアップロード)
- 審査にあたっての不明点について事務局から問い合わせが来たら対応する
- 審査結果をメールで受領する。認定された事業者はIPA サイト内の「認定事業者一覧」に掲載される
なお、非上場企業の多くは、上場企業とは異なる取り組みが必要になると考えられます。それは、DX認定制度が、DX推進のための取り組みと、それらが経営ビジョンや経営戦略と連動していることを、公表済み情報からの抜粋により説明することを義務付けているからです。上場企業の場合は、有価証券報告書、アニュアルレポート、決算説明資料などで経営ビジョンや経営戦略を公表しており、DXの取り組みについて紹介していることも珍しくありません。しかし、非上場企業の多くはそのような形で情報発信することが少ないと思われます。もし、引用できる公表済み情報が少ない場合は、自社のホームページなどに経営ビジョンやDXの取り組みなどの情報を追加するのが有効な方策です。
CACの取り組み
CACグループは、自らの目指すべきデジタルシフトの方向性を明確にし、その実現に向けた指針となるべきものとしてビジョン(CAC Vision 2030)を策定しています。
CAC Vision 2030:テクノロジーとアイデアで、
社会にポジティブなインパクトを与え続ける企業グループへ
CACは、CAC Vision 2030達成への道筋として自らが作り出したデジタルプロダクトとサービスを提供する「プロダクト&サービス事業」を主力とする企業への転換を掲げ、その具体的な戦略・戦術を中期経営計画に組み込んで遂行しています。また、この転換を支える社内DXも推進しています。
このような取り組みが認定基準を満たし、社外への情報開示も適切に行われていることから、2022年7月にDX認定の取得に至りました。
CACでは、今後もデジタルテクノロジーを活用したプロダクト&サービスの開発・提供により社会やビジネスのDXを推進し、その先にある持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
[参考資料]
DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)(経済産業省)
DX認定制度(IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)