製造業の人材不足にDX活用で対応する ― CACのマネージドDWS
少子高齢化が進む日本において、各産業における人手不足の問題は深刻化しており、製造業も例外ではありません。こちらでは、製造業の人手不足の現状とそれに対応するためのDX活用についてレポートします。
製造業における人手不足の現状
経済産業省、厚生労働省、文部科学省が取りまとめている「2023年版ものづくり白書(以下、白書)」によると、製造業の就業者数は2021年1,045万人、2022年1,044万人と横ばいの状態であるものの、全産業に占める製造業の就業者数の割合は低下の傾向が続いており、2022年は2002年と比較して3.5ポイント低下となっています(図1)。
また、独立行政法人 中小企業基盤整備機構の調査(2023年7-9月期)では、中小企業における産業別の従業員数における過不足状況(従業員数過不足DI)における製造業の数値は2023年第3四半期でマイナス19.4となっており、不足感が新型コロナウイルス感染症拡大以前の水準近くまで低下しています。さらに、日銀短観(2023年9月調査)の雇用人員における製造業全規模の数値が-20(実績)であることから、この不足感は中小企業に限らず大企業も含めた製造業全体のものであることが分かります。一方、白書によれば、新規学卒者の製造業への入職割合は直近の2021年は9.5%ですが、2000年以降低下傾向にあります。
人手不足に対応する施策としては、高齢者や女性の雇用促進、外国人労働者の採用がありますが、近年の製造業における高齢者と女性の就業者数は横ばいで、外国人労働者数の伸びも鈍化しており、製造業におけるこうした労働力確保による対応の先行きには不透明感があります。
製造業の人手不足へ対応策 ― DX活用による生産性向上
新たな労働力確保が難しい状況のもとで人手不足へ対応する施策としては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用による生産性向上の実現があげられます。
白書によれば、製造業におけるデジタル技術活用状況は2019年の49.3%から2021年には67.2%と増加傾向にあり、また、こうした企業のデジタル技術活用の目的に生産性向上もあることが指摘されています。こうしたデジタル技術を活用する企業は「そのままの人員配置で、業務効率や成果が上がった」「労働時間が減少した」「経験の浅い社員や若手を配置しやすくなった」といったプラスの影響を感じており、DX活用による業務効率化、そして生産性向上への効果がうかがえます。
製造業の企業がDX活用に注力する傾向は投資の動向にも表れています。白書によれば、製造業の企業の有形固定資産投資の目的は、2020年と比べて2022年には、システム化やDX関連の設備投資に該当する「旧来型の基幹システムの更新や維持メンテナンス」「DX関連(工場のIoT化等)が大きく伸びています。これは無形固定資産投資の目的にも表れている傾向です。
製造業におけるDX活用の課題は何か
白書では、デジタル技術を活用していない企業が技術を活用しない理由にも触れています。それによると、「導入・活用に関するノウハウが不足しているため」に次いで「導入・活用できる人材が不足しているため」が高い割合を占めています。ここでも「人材」に課題があることが伺えますが、一方で、近年のデジタル技術を活用していない企業が資源投入をしている取り組みをみると、「設備投資の増強」に次いで「採用・人材育成の強化」が多くなっており、こうした企業も人材に資源を投入していることがうかがえます。
また、デジタル技術を活用している企業におけるデジタル技術活用に関する人材確保の取り組みを見ると、「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」が非常に多く、DX活用のために社内人材の育成に注力している企業が多いことが分かります。
社内人材の育成によりDX人材を確保しようとする取り組みは、実は製造業に限った傾向ではありません。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が発行している「DX白書2023」によると、日米のDXを推進する人材の獲得・確保の取り組みでは「社内人材の育成」が最も高くなっています。
社内でDX人材を育成するためには、求めるDX人材のプロファイルの設定、共通理解の確立、社内の人選、キャリア形成とキャリアサポートの構築、リスキリングの体制整備、スキルアップ施策と評価基準の定義、企業文化の変革など、多岐にわたる要素が必要です。
一方で、本来DX推進において重要な役割を担う候補に挙がるべき社内ICT人材は、社内の問い合わせ対応やシステムの維持運用に多くの工数を費やしているとの声も聞かれます。経済産業省が2018年に初版を発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」は、我が国企業の IT 関連予算の 80%が現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)に割り当てられており、新たな付加価値を生み出すために必要な IT 戦略に対して、資金・人材を十分に振り向けられていないという課題を指摘しています。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発行した「企業IT動向調査報告書2023」によると、2022年度のラン・ザ・ビジネスへのIT予算の配分は76.1%であり、現在も社内ICT人材の多くがDX活用ではなく、現行ビジネスの維持・運営に充てられていると考えられます。
社内ICT人材を解放しDX活用推進 ― マネージドDWS
こうした状況の中、社内ICT人材の解放とDX活用を支援するためにCACでは、マネージドデジタルワークプレースサービス(マネージドDWS)を提供しています。
マネージドDWSとは、インフラ環境全般のシステム運営を実施するサービスです(図4)。
CACがITインフラ環境をマネージドサービスで提供することにより、お客様は自社のICT人材をインフラ運用業務から解放し、DX活用の業務に専念させ、DX人材の育成と確保が可能になります。
また、CACの専門チーム「Innovation Office」がお客様へDXソリューションを含む最新テクノロジーやソリューションのトレンド分析、PoCを通じ効果的なテクノロジー/ソリューションを定期的にご提案いたします(図5)。
マネージドDWSは、国内のみならずグローバルアウトソーサーとの協業により、CAC主体でグローバル全体のマネージドサービスを提供することも可能です。
CACはマネージドDWSにより、製造業の企業が社内ICT人材の貴重なリソースを解放し、DX活用できるようサポートします。
製造業の生産性向上を支援するCACのサービス
マネージドDWSの他にも、CACでは製造業向けの生産性向上に貢献するサービスを提供しています。その一部をご紹介します。
IoT×AIの技術で現場の生産性向上を支援 ― 製造業向けソリューション
CACは「製造業向けソリューション」として、AI-OCRや画像認識AIといった技術を活用して下表のようなソリューションを展開しています。
ソリューション名 | 内容・期待される効果 |
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Smart Factory 可視化ソリューション |
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製造業向けAI-OCRソリューション |
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画像認識AIによる製造現場向けソリューション |
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ARマーカーを用いた製造業向けソリューション |
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CAC 製造業向けソリューション
いずれもIoTやAIの技術により、人手不足の製造業の現場における業務効率化、そして生産性の向上に寄与するサービスです。
ナレッジ活用で製造業の生産性向上に寄与した事例 ― 企業内検索エンジン「Neuron ES」
CACには、膨大な社内データ(ファイルサーバ)の整理に課題を抱えていた製造業の企業に、欲しい資料や情報を素早く見つけられるシステムを導入することで、生産性向上を実現した事例もあります。
Neuron ESは、企業内のファイルサーバやポータルサイトなどに格納されている様々な情報・資料へ、保管場所にとらわれずに高速&横断的に一括検索できる企業内検索システムです。オンプレミスのデータだけでなく、クラウドも一括で横断検索が可能で、企業の業務効率化、生産性向上を支援します。マニュアルや各種手順書を始めとする情報資産を一括検索することにより「あの資料どこ?」で戸惑う時間が無くなります。
製造業の課題解決を強力に支援
CACは設立以来50年以上にわたり、製造業に従事するお客様のビジネス成功を支えるべく、基幹系を含めて数多くのシステム構築に携わってきました。
DX推進からAI/IoT活用、在庫・設備管理の省力化、製品検査の自動化など様々な領域においてお客様から高い満足と信用をいただいています。
今後も、CACでは製造業における最新のテクノロジーを活用したビジネス革新を力強く支援するために、技術の開発や応用に取り組んでいきます。
[参考資料]