アステラス製薬株式会社様
世界各地のExchange Serverを統合し、グローバル化を推進
2005年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して発足したアステラス製薬では、経営ビジョン「VISION2015」実現のために、グローバル化を推進しています。
世界各地で事業を展開する同社では2011年、「グローバルExchange統合」プロジェクトを実施。Exchange Serverの統合によるコミュニケーション環境整備について、プロジェクトをリードされたお二人に話を伺いました。
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アステラス製薬 株式会社
コーポレート IT 部
インフラグループリーダー
次長 塩谷 昭宏氏 -
アステラス製薬株式会社
コーポレート IT 部
インフラグループ
課長 齊藤 啓一氏 -
株式会社 シーエーシー
サービスビジネスユニット第三部
チーフプロジェクトマネジャー
「グローバル Exchange統合
プロジェクト」
プロジェクト マネジャー
大町 哲也
プロジェクト概要
導入システム名
アステラス製薬全組織を対象としたExchange環境の統合。アジアと日本のExchangeをマイグレーション。
目的(課題)
グローバル化推進のため、全組織でのインフラストラクチャーの標準化を進める。メールコミュニケーションの向上、グローバル企業としての一体化、Exchange管理コストの削減を目的とする。
アプローチ
クラウドサービスも検討したものの、オンプレミスでのメールコミュニケーション環境の最適化を進めることに決定。それまではグローバルでMicrosoft Exchange Server2003、2007が混在していたExchange環境をMicrosoft Exchange Server2010に統合。
統合への背景
「VISION2015」実現のためIT全体のグローバル化を推進
「明日は変えられる。」のスローガンのもと、研究開発型のグローバル製薬企業として躍進を続けるアステラス製薬。同社では2006年、経営理念である「先端・信頼の医薬で世界の人々の健康に貢献する」の実現のために、経営ビジョン「VISION2015」を策定しました。「VISION2015」は、2015年に実現を目指す企業像「グローバル・カテゴリー・リーダー」とそのための指針・戦略です。
「VISION2015実現のためには、IT全体のグローバル化が必要ですが、特にITインフラの部分についてはそれよりもさらに先んじてグローバル化を行う必要がありました」とアステラス製薬 コーポレートIT部 インフラグループリーダーの塩谷昭宏氏は説明します。
アステラス製薬は日本を本社に、北米、ヨーロッパ、アジア、オセアニアと、世界中で事業を展開。ITインフラについても各Regionで独自のIT組織を持ち、運用を行ってきました。
2006年、ITのグローバル化、標準化を進めるために「Global IT Infrastructure Roadmap」を作成。2010年までの第1のステージでは、社員が利用するPCをWindows7に標準化し、さらに認証基盤となるActive Directoryと人事システムと連携するアカウント管理の統合を実施しました。
ロードマップの次なるステージはコミュニケーション環境の整備です。同社はコミュニケーション基盤として、各Regionそれぞれの統合前のDomainにExchange Serverを設置していました。
それぞれのRegionで別Exchange組織のため、カレンダーの共有や電子メールの配布リストなど、さまざまな運用上の制限がありました。「カレンダーについては、特に欧米でグローバル共有したいという声が多いですね。他のツールを使ってでも連携したいという要望が多くあります」と話すのはアステラス製薬 コーポレートIT部 インフラグループ 課長の齊藤啓一氏です。
ExchangeがそれぞれのRegionで分かれていることで、運用管理の効率面に問題があるというだけでなく、実際のコミュニケーション面でもグローバル利用という観点では不便を感じさせる状況でした。
CACを選んだ理由
グローバル統合のために海外との連携が不可欠
2010年4月には次のコミュニケーション環境についての検討が開始されました。当初はクラウドサービスなどの外部サービスを利用することも検討されましたが、機能やコストなどの比較検討を行った結果、オンプレミスで環境を構築することに決定しました。グローバルでのインフラ担当者会議を経て、夏には日米欧CIOの承認を受け、Exchange Server 2010への「グローバルExchange統合」プロジェクトが決定しました。
2010年9月にはコンペが行われ、プロジェクト実施担当としてCACが選ばれました。
「CACの提案は、要件実現のための方法が具体的に記述されていました。役割の定義も明確で、優れた内容の提案でした。
CACには第1ステージでもお願いしていましたし、以前の日本国内Exchangeのバージョンアップやその後の運用にも関わってもらっています。アステラス製薬の事業やITインフラ面を深く理解しているということも高いポイントでした」(塩谷氏)
今回のコンペでアステラス製薬が最も重視したのは、グローバルでの連携についてでした。統合プロジェクトは、設計を日本で、構築を各Regionが現地作業で行います。このグローバル展開を、現地と上手く連携して行うことができるかが選定の最も重要なポイントとなりました。CACは、第1ステージでの実績と中国や米国にも海外子会社を持ち、海外での構築や連携にも不安はありませんでした。
「統合プロジェクトでは、設計を統一しているとはいえ、ある程度運用上の自由度を持たせた形での構築となります。各Regionと上手く連携して進めていくことができるかが最も重要でした」(塩谷氏)
2010年10月には統合プロジェクトがスタート。日本での要件定義、設計、方針策定から、ラボでのテスト環境構築、実環境に近いシステムでの検証を2011年3月まで行いました。Exchange Server 2010には、冗長性を高める「DAG(Database Availability Group)」機能が搭載されましたが、この機能の検証も行われました。
2011年4月から実際の構築が始まり、5月、6月にはアジアRegionの統合・移行を完了。日本では7月にコーポレートIT部部員によるパイロット移行作業、8月22日に全てのユーザー移行作業が行われました。
統合の効果
統合を無事に完了。メール基盤のスムーズな移行をサポート
「移行作業は非常にスムーズにいきました。大成功と言っていいでしょう」と塩谷氏は目を細めます。メール環境の移行では利用するユーザーの作業が複雑だと混乱を生じるケースも多いですが、今回の移行ではメールクライアントはOutlookのまま、事前に検証された移行ツールを使うことで新サーバーへも簡単に接続することができ、環境の移行は1日で約10,000人を問題なく完了しました。
「厳しいスケジュールでしたが、サーバー側の移行についても、テストから実作業までしっかりやっていただきました」(塩谷氏)とCACの作業を評価しています。 その後、数ヶ月経過しましたが、安定稼働を続けています。
今回の移行は日本とアジアなので、北米、欧州での統合が完了しないと本格的なグローバル化の効果は見えにくいですが、少なくとも日本とアジアでRegionをまたいだ部分についてはその目的を達成できています。また、DAGを用いたDR(Disaster Recovery)構成を全てのRegionで構築し、全てのRegionで同一アーキテクチャーによるDR機能を有することができました。
メール機能の移行は完了し、問題もありませんが、コミュニケーション基盤としては課題も残っています。
「グローバル設計では、Exchange Server 2010のパブリックフォルダーはオプション機能とし、今回の日本移行ではパブリックフォルダーの利用を止めることにしましたので、その手当に苦労しました」と齊藤氏は振り返ります。ファイルサーバー、SharePointに切り替えたりしていますが、しばらくはパブリックフォルダー閲覧のために旧サーバーも残しておく予定です。
今後の展望
全世界のITインフラをグローバル化。アプリケーションのグローバル化までを視野に
今後は北米、欧州でのExchange統合が2012年3月末を目処に行われます。すでに実施された日本、アジアでの統合のノウハウも生かしての作業となるため、さらにスムーズに統合作業が進むことが期待されています。
グローバルExchange統合の後には、すでに次のロードマップが策定されており、2015年に向けて、グローバルでの情報共有や、コラボレーションの整備といったプロジェクトが始動しています。
今後の展開として、「インフラ整備の後には、ビジネスアプリケーションのグローバル化まで視野に入っています。グローバルでのアプリケーション共有が実現できてこそ、真のITグローバル化と言えるのではないでしょうか。CACには今回の統合プロジェクトに続いて運用もお願いしていますが、蓄積してきたノウハウを生かして、スムーズな運用に繋げてほしいですね」と塩谷氏。
齊藤氏は「ビジネスがグローバル化されていくなか、ITのグローバル化対応は避けて通れない課題です。今後のグローバルプロジェクトおよびその運用も協力して進めていってほしいです」と期待を寄せます。
グローバル化を推進するアステラス製薬。その統合されたITインフラは、同社が「グローバル・カテゴリー・リーダー」へと突き進んでいく基盤となります。今後も続くグローバル化への取り組みは同社の競争力強化に大きく貢献していくでしょう。
- 記載事項は2011年11月取材のものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承ください。
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